『本音。』
「イヤだよ…。」
ロンの声はこれ以上無いくらい震えていた。
「こんなの……こんなの僕イヤだよ……。」
その目からは枯れることの知らぬ泉のようにこんこんと涙が溢れ出ていた。
「ねぇ……お願いだから…。僕の方を見てよ…!正気に戻ってよ……!」
その手はこれ以上遠くには行かせまいと強く、強くフレッドの肩に食い込んでいた。
やっぱり何時までも二人ではいられないのかな…。
「何云ってんだよジョージ。
そうだ!俺たちで悪戯専門店開こうぜ!ゾンコに負けないくらいの!!そしたら俺たちずっと一緒にいられるだろ♪」
プラムか…誰か誘わないとな……。
「オレはやっぱアンジェリーナかな。ま、オレが誘えばオッケーしてくれるだろ☆」
パーシーとペネロピー…嬉しそうだよな。あんなパーシーの顔見たことないよ…。
「ほんとアレが石頭パーシーかねぇ…。
あー、オレも彼女作ろっかなぁ。」
フレッド、オレお前が好きだ。
「もちろんオレもお前が好きだぜ、相棒。」
違う…オレはお前を愛してる。
家族としてじゃなく、
兄弟としてじゃなく、
双子の片割れとしてじゃなく、
悪戯のパートナーとしてじゃなく、
フレッド・ウィーズリーとして愛してるんだ。
「…何云ってんだよ…。お前自分が何云ってんのか解ってんのか…?」
モチロンさ。
「…………オレもお前が好きだ。家族の中で、兄弟の中で、一番お前が好きだ。」
…………そっか☆
それがオレが聴いたお前の最後の声だったな…。
失ってから初めて気付くってよく云うけど…ホントだったよ。
お前の居ないこの世界がどれだけオレにとって不必要なモノなのか。
想像したことも無かった。
「なぁ、ロン。」
ずっと真っ白のベッドの上で窓の外を見ていたフレッドが振り返った。
こっちに帰ってきてくれたんだ!
こっちの世界に!!
「何!?フレッド、咽喉乾いた!?お腹空いた!?僕ママを呼びに行って来るよ!!」
慌てて病室を扉を開け、飛び出そうとする。
そんなロンの耳に何かフレッドの囁く声が聞こえたような気がした。
「どうしたの?何か云った?」
振り返ったロンの瞳に映ったのはいつもの悪戯が成功した時のような嬉しそうなフレッドの笑い顔だった。
「いいや、何でも無いさ。急いで走って廊下で転ぶなよ、ロニー坊やv」
「転ぶわけ無いだろ!!」
ふざけた口調が嬉しかった。
以前と変わらない様子のフレッドが嬉しかった。
早く、早くママに知らせなくちゃ!!
パタパタと廊下を走っていく音が段々と小さくなっていった。
なぁ、ロン。
オレもジョージを
家族としてじゃなく
兄弟としてじゃなく
双子の片割れとしてじゃなく
悪戯のパートナーとしてじゃなく
ジョージ・ウィーズリーとして愛してることに気付いたんだ。
そして
アイツが今一人で哀しんでる事にも。
オレの最期の言葉
ちゃんとアイツに伝えないとな。
ママやパパ、ビル、チャーリー、パーシー、ジニーと一緒に戻ってきた病室は空っぽだった。
「2人は幸せだったのかなぁ…」
ポツリと呟く。
「あら、そんなの決まってるじゃない。」
ロンのこぼした言葉にハーマイオニーは答えた。
「2人は今幸せいっぱいよ。そうに決まってるわ。……そうじゃないと…私きっと2人を殴ってしまうかもね。」
その唇はぎゅっと噛み締められている。
「そうだね。その時は僕も一緒に殴るから。ハリー、止めるなよ。」
「もちろん。止めるなんて有り得ないね。僕も一緒に殴ってるよ。」
「あら、急がないと授業に遅れちゃう!!」
「ホントだ!急ごう!!」
「ゲッ!スネイプの顔を見ながら嫌味を言われるなら、魔法無しでトイレ掃除のほうがマシだよ。」
駆け出す3人。
「うわぁ!!」
「「ロン!!」」
「大丈夫かい、ロン。」
「足元には気を付けないから転ぶのよ。ほら、早く教科書を拾って。」
「痛ってー…」
膝を擦りながら教科書を拾っていく。
「絶対あの二人の所為だ…。」
小さく呟いたロンの言葉は誰の耳にも届かなかった…?
「「ロニー坊やがオレ達を殴るなんて無理無理vv」」
end.
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