『進路。』



「これは来週までに提出です。では今日は終わります。」



マクゴナガルが教室から出ていく。
目の前には一枚の紙。





『進路調査書』





ご丁寧にも第三希望の欄まで作られている。
俺は羽ペンを手に取るとサラサラっと紙を埋めていった。
その様子を見ていたリーが
「へぇー、お前でも将来のこと考えてんだなぁ。」
なんて笑う。
俺は教科書類を片づけながら
「当たり前だろ。俺はこの将来図以外考えた事無いぜ。」
っと答えた。
そう、俺はこの将来図しか描いてないし描こうとも思わない。
っていうか…他の進路に進んだ俺なんて想像も付かないんだけど。
書き終えた紙とペンを鞄に仕舞う。
渡された時に出しとけば良かったな。なんて思いながら鞄を閉じ振り返ると既に片づけ終えたジョージが少し驚いた顔をして立っていた。
「どうしたんだジョージ?」
ちょっと顔色が悪いか…?
「いや、何でもないさ。それより何て書いたんだよ。」
ジョージがわき腹をつつきながら答えを促した。
「それは。」





「「それは…?」」
ジョージとリーが真剣な顔で答えを待つ。

「ひ・み・つ☆まぁお楽しみって事で♪」

それを聞いて、リーは「お前に訊いた俺が莫迦だったよ。」と言い出すし、ジョージは「まぁお前事だから大したことじゃないだろうな。」なんて云いながら歩いて行く。
自分から訊いておきながら大した事じゃないって酷くない?
「あー腹減った。フレッド、早くしないと置いてくからな。」
そう云ったとっくにジョージは扉の向こうだ。
つまりもう置いて行かれてるって。
俺は慌てて一式を掴み取ると走って後を追いかけた。




ジョージはあの紙になんて書いたんだろうか…。
そんな事は聞けなかった。
まぁ、聞いても教えてくれないだろうしな。















「フレッド・ウィーズリー、ジョージ・ウィーズリー、この後少し残りなさい。話があります。」
進路希望書を提出してから二日後の授業終了後、俺たちはマクゴナガルに呼ばれた。
「今度は何をしたんだ?ま、何にせよ頑張れよ☆」
教室を出ていきながら、みんな口々に応援(?)の言葉を掛けていく。
俺は「おぅ!」と返しながら“あれか?”“これか?”と頭の中に浮かび出していく。
何で呼ばれたのかは分からないが、思い当たることは沢山ある。
なんたってホグワーツのお騒がせコンビだしー♪
そう思いながらフッと横を見るとジョージの顔は俯いていた。
「おい…ジョー……」
「二人とも、こちらに。」
俺が声を掛けたと同時にマクゴナガルに呼ばれる。
俺たちは二人でマクゴナガルのデスクの前に立った。
「何で呼ばれたは判ってますね?」
マクゴナガルの静かな声。
「いいえ、全く判りません。」
俺は答えた。
だって下手に答えて藪蛇は勘弁願いたいし、本当にどの悪戯で呼ばれたのか検討が付かないからだ。
ところがジョージはしばし沈黙した後、
「……はい……。」
と一言。
「では、どういう事か説明してもらいましょう。」
マクゴナガルがデスクに置いたのは二枚の紙。
それは俺とジョージの進路調査書だった。
「コレが何か?」
訳も解らず逆に問う。
提出期限はちゃんと守ったし、名前もちゃんと書かれてる。
さっぱり呼び出された意味が解らない。
「解らないんですか?」
よくよくもう一度紙を見る。
向かって右側に俺の紙。向かって左側にジョージの紙。
ん?あれ?向かって左側が俺か??
希望の欄を見ながら考えるも、やはり左側に有るのはジョージの字で。
いくら似てるといっても自分の字を間違えるわけも無く。





「「……クッ…クククク…アハハハハ!!!!」」





俺達はたっぷり三秒間紙を見比べた後、さらに三秒間お互いの顔をみて吹き出した。



「やっぱりお前は俺の相棒だよ。」
とジョージが云えば、
「最高の相棒だぜ。」
と俺。
俺たちそれぞれの反応を見て、マクゴナガルは思わず溜息を落とした。
「あなた達、決して示し合わせてこう書いた訳では無いんですね?」
「当たり前ですよ。何て云ったって自分の進路。幾ら双子とは云え、示し合わせて書くわけが無いじゃないですか♪」
俺の答えにマクゴナガルはまた一つ大きく溜息を吐くと、「まぁ、これから変わっていく事も有るでしょう…。」と小さく呟いた。
「センセー、俺たちもう帰っても良いですか?これからクイディッチの練習もありますし。」 と云い、ジョージの手を取ると教室の出口に向かって歩きだす。
誤解も解けたなら、もう用事は無いだろう。
それにジョージと早く二人っきりになりたかったし。
「あなた達、理解ってはいると思いますが、みんなそれぞれの道を歩いていくんですからね。いつまでも一緒と云うわけには…」
後ろから飛んでくるマクゴナガルの声。俺はその声に被せるように振り返って答えた。
「でも、たまたま歩いた道が一緒だったって事もありますよね☆」
そしてジョージと一緒に走り出す。
まだまだマクゴナガルは何か云っていたが、そんな事はもうどうでも良かった。










『進路調査書』

[第一希望]
“ジョージと”
“フレッドと”
悪戯専門店を開く。

[第二希望]
“ジョージと”
“フレッドと”
一緒に何か偉大な事をする。

[第三希望]
“ジョージが”
“フレッドが”
側に居ればそれでいい。





end.