『続・迷惑な話。』



「取り合えず医務室に行かないと。」
ハーマイオニーが赤毛の女の子〜ジョージの手をとってレディの扉を開けようとしたその時だった。
「何ですか、この騒ぎは!!」
レディの扉が一足早く開き入ってきたのは…

「マクゴナガル先生…。」

その瞬間談話室の空気が凍った。
この騒ぎでは確実に減点は免れないだろう。
マクゴナガルはその鋭い瞳で辺りを見回す。
その視線がある一点で止まった。


「あぁ、まさか…そんな…」


もちろんある一点とは双子のウィーズリーズの場所。
「フレッド・ウィーズリー、ジョージ・ウィーズリー、その薬の作り方をどこで調べたのですか。」
「「図書館の本でです。」」
流石にマクゴナガルの質問に正直に答える。その顔がいつもの怒りに満ちたものとは違い、どちらかというと困ったように思えたからだ。
「…禁書の棚において置くように云っておいた筈なのに…。
とにかく薬を使ったほうはどっちなんです。」
「使ったわけじゃないんですけど…」
「どっちなんです!」
「ジョージです…。」
「そうですか。では、ジョージ・ウィーズリーは私と一緒にスネイプ教授の研究室に行きます。ついていらっしゃい。」
その言葉にハーマイオニーが質問する。
「医務室のマダム・ポンフリーの所ではないのですか? 何故スネイプ教授の研究室なんです?」
それはその場に居た全員の疑問だった。
「この薬は600年も前に調合禁止になった薬なんです。
おそらくマダム・ポンフリーでも解毒薬の調合は解らないでしょう…。」
「スネイプは…スネイプ教授は何故そんな薬の解毒薬の調合を知っているんですか?」
今度はハリーが質問する。
「それは…当然魔法薬学を専門とする先生ですから。」
その台詞はいつものマクゴナガルの凛とした声ではなかったがそれ以上は何も聞けなかった。何故ならローブを翻してレディの所に既に歩き出していたからだ。
「先生!俺もついて行って良いですか?」
フレッドが不安そうにマクゴナガルについていくジョージを見て声を上げた。
「…まぁ、良いでしょう。貴方にも責任が有る事ですし。」
その言葉を聞いてジョージの顔もホッと緩む。
どんな説教もフレッドと一緒なら何の不安も無い。
フレッドはジョージの側に駆け寄り、ポンッと肩を叩いた。
フレッドもジョージと同じ気持ちなのだろう。
それがその行動を通して伝わってきた。



「「おとなしく怒られるとするか☆」」
マクゴナガルに聞こえないように、二人は小声でそっと顔を見合わせた。



じめじめとした暗い階段を一段一段と降りていく。
いつ来ても厭な空気を湛えた場所だった。

コンコン。

「スネイプ教授、マクゴナガルです。入りますよ。」
扉をノックし、ノブを回すとギィッと厭な音と同時に扉が開く。
スネイプは何か薬を調合している途中だった。
「何ですかな、マクゴナガル教授。我輩の研究室に用とは珍しい。」
その目は、鍋から離さず色々な物を(おそらく)絶妙なタイミングで放り込んでいく。鍋の中の液体は、赤から緑、そしてきれいなブルーへと変わっていった。
「実はこの子に解毒薬を作ってもらいたいんです。」
マクゴナガルが赤毛のロングヘアーをした女の子を手前に押し出す。
「解毒薬を?それなら医務室にでも行ったほうが良いのでは?」
女の子をちらりと見ると、また鍋に視線を戻す。
「おそらく貴方しか作れないと。だからこちらに来たのです。
貴方は一度学生時代に我流で解毒薬を作ったことが有りましたよね。」
そこまで聞いて、スネイプは鍋から目を離し女の子をじろじろと見回した。
「まさか…双子のウィーズリーなのか…?」
真っ赤な赤毛と可愛さを強調しているそばかすを見て、スネイプが驚く。
「そのまさかです。この子はジョージ・ウィーズリーです。」
「て、転換薬…こいつら何処でその作り方を…。」
その声には怒りが混じっていた。
「あの本…禁書の棚に移されてなかったみたいなのです…。」
マクゴナガルの言葉を聞きスネイプは思いっきり眉間に皺を寄せた。
「あれほどの騒ぎになっておきながら、なんて愚かな!」
スネイプの言葉は、こんな状態でもウィーズリーズの心を刺激した。
「あれほどの騒ぎって何のことです?」
マクゴナガルの後ろから顔を出したフレッドが尋ねる。
その瞬間、スネイプの土気色の顔が変わった。
思い出したくもないことを、云われたのだろう。
「貴様らには関係ない事だ!仕方がないから解毒薬は作ってやるが、
最低でも一週間は掛かるから、暫くの間はおとなしくその姿で居ることだな!用が済んだらさっさと出て行ってもらおう!!」
スネイプは懐から杖を取り出し、扉に向かって一振りした。
扉がバタンと大きな音を立てて自然に開く。
早く帰れということだろう。
双子はその“あれほどの騒ぎ”が気になったが、マクゴナガルに背を押され研究室を出て行かざるを得なかった。


「「先生!騒ぎって何のことですか?」」
階段を上がりながらダメで元々訊いてみる。
マクゴナガルは、一瞬足を止めると
「昔のことです。」
と云って、さっさと階段を上っていってしまった。



「「そこまでして隠したい騒ぎって何だろうな♪」」



この後、暫くこの話題をいろんな教授に聞きまわった二人の姿が見掛けられたと言う。
しかし、どの教授も暫く苦笑いをしただけで誰も教えてくれなかったらしい。
ただ、ダンブルドアだけは「スリザリンの白百合事件」とだけ言い残し、去っていった。



end.